ニセコに、看板を出していないレストランがあるという。友人に連れられて、そのお店へランチに向かった。
町の中心部から車で少し。田畑と山しか見えなくなったころ、近藤地区の静かな場所に、黒っぽい板壁の一軒家がぽつんと立っていた。ここが〈ウシュク〉。本当に看板がなくて、扉に小さく〈UISGE〉の文字があるだけ。

近藤地区の田畑の中に立つ一軒家。まわりには看板も標識もない

扉の上に、小さく店名。これを見つけて、ようやくここで合っていると安心する
扉を開けると、ふわりといい香りがして、それだけでもう来てよかったと思う。高い天井に梁が渡り、ドライフラワーのランプがぶら下がる店内は、木のぬくもりがあって落ち着く。席はカウンターで、目の前が鉄板。ランチもディナーも予約制で、シェフがひとりで調理から提供までを担っているそう。

カウンターの向こうが鉄板。調理する姿を眺めながら食事ができる

梁の下に、ドライフラワーのペンダントライト。
まずは食前の一杯と、手書きのメニューが届く。この日はランチのコース。

手書きのメニューと、食前の一杯(ノンアルコールのスパークリング)
前菜は、白身魚とカニのテリーヌに人参と生姜のソース。紫キャベツのマリネ。知床どりと真狩ハーブ豚の自家製パテを生ハムで巻いたもの。添えられた野菜は地元のもので、夏の皿だなあと思う。

前菜の盛り合わせ。器の絵柄と野菜の彩りがきれい
続いて、真鯛とホタテ。白ワインのソースで、焼き野菜はニセコのズッキーニと大滝の椎茸。お好みで塩をつけながらどうぞ、と言われて、椎茸に少しつけてみる。香りがよくて、これだけでもずっと食べていられそう。

真鯛とホタテ、焼き野菜
メインは十勝彩美牛のステーキ。鉄板で焼き上げられたお肉は、月並みな言い方だけれど、口の中でほどけていく。手前のソースと塩で味を変えながら、ゆっくり味わった。

十勝彩美牛のステーキ。ソースと塩で

締めはガーリックライス。鉄板の上でお肉の旨みごと炒められて、コースの最後にこれが出てくるのはずるい。ただ、ステーキソースはご飯に合うように作ってあるのだそうで、常連さんはあえて白いご飯を頼んで、ステーキと一緒に食べる人が多いのだとか。次はそちらも試してみたい。

デザートまでいただいて、気づけばずいぶん長い時間が過ぎていた。
シェフの小川さんは、以前はヒルトンニセコビレッジの総料理長だった方。自分のお店を持つという夢をかなえて、この一軒家で、ひとりで鉄板に向かっている。器も、料理も、飲みものも、ひとつひとつ選ばれたものだとわかる。ニセコの食材がふんだんに使われていることも、あとから思い返してじんわりうれしくなる。

シェフの小川さん。料理の説明もひとつひとつ丁寧に
メニューは春、夏、秋、冬で替わるという。札幌から車を走らせて、ここで2時間、3時間を過ごして帰る。それだけの価値がある時間だったと思う。今度は秋の皿を食べに来たい。
ひとつ、うれしい知らせ。〈ウシュク〉は今年の「さっぽろオータムフェスト2026」に初めて出店している。会場は大通公園の「porocoときめきグルメ通り」で、会期は9月11日から10月3日まで。お店でも人気のハンバーグをホットサンドにして、ナチュラルワインと一緒に楽しめるそう。ニセコまで行く前に、まずは札幌でウシュクの味に触れてみるのもいいかもしれない。
ウシュク(UISGE)
所在地 ニセコ町字近藤199-16 [google map]
電話番号 0136-44-2271
営業時間 ランチ 12:00〜15:00(L.O.14:30)/ディナー 17:30〜21:00(L.O.20:30)
定休日 水、木
※ランチ、ディナーともに要予約
駐車場 あり
※掲載の内容は取材当時のものです。
※コースの内容は季節や仕入れにより変わります。





