ここではいままでどんなことがあったのだろう。ニセコのことをもっと深く知りたい。
そんな思いから、サイコーニセコ編集部は、ニセコで文化を築いてきたレジェンドたちを訪ねることに。
前々回、前回に続いて登場するのは、ニセコのペンション文化を盛り上げた工藤達人さん。みなさんは、1980年代にニセコのペンション街で”建国”された「ポテト共和国」というミニ”独立国”を知っていますか?工藤さんは、その初代”大統領”に就任したレジェンドです。
ニセコのみならず後志のPRにも尽力したり、ニセコフットパス協会を立ちあげたり、多岐にわたって活動されている工藤さんに、さまざまなお話を伺ってきました!
ペンションのお客さんをもてなしたり、フットパスであちこちを歩いたり、そこには工藤さんの「遊び」を楽しむ心が宿っています。最終回となる今回は、工藤さんが思うニセコでの遊びについてお届けします。

ペンション時代には、遊びを求める人たちがリピーターに。
「おいしい料理を出すのも宿の使命と思ってやっていましたけど、そればかりではないと思ったんです。やっぱり遊び方を伝えるのが大事なんじゃないかと」
ペンションを経営していた頃、そのことに気づいた工藤さんは「ここでの遊びを知ったほうが楽しめるから」と、お客さんを外へ遊びに連れ出していたそう。
「自然の中で遊べば、何泊かしても時間を持て余すってことは意外とないんです。でも、遊び方を知らないと難しいから、そういうフォローをできればと思ってやっていました」
それを伝えるうち、工藤さんが案内する遊びを目的にお客さんが訪れるようになり、ペンションにはリピーターが増えていったようです。
「若い人はとくに『あのペンションのおじさん、遊んでくれるぞ』って言ってまた来てくれるんですよ」
そう言って笑う工藤さん。自然との触れ合いは、いわばお金をかけずにできる遊び。お金をかけなくても贅沢な体験ができることを、お客さんたちに伝えていたようです。

雪の中で楽しむティータイムは、冬だけに叶う至福のひととき。
冬のニセコというと、やっぱりスキーやスノーボードの印象が強いですが、雪で遊ぶ方法はほかにもいろいろあるようで、「冬はおもしろいですよ」と工藤さん。
「たとえば雪道をいっしょに歩いて行って、何をするかは伝えないで、ただ『休憩しよう』って言うんです。それで、スコップで雪をかためて、休憩できるイスとテーブルをつくります」
雪でつくられた即席ダイニング。それだけでも、本州から来て雪に馴染みのない人や、道内から来ても普段雪遊びをしない人にとっては新鮮に映るでしょう。
「それから、携帯のストーブでお湯を沸かす。コーヒーを淹れて、手作りのクッキーなんかも配って、ちょっとしたサプライズ。そういうのって非日常じゃないですか」
工藤さんの「休憩しよう」からはじまる、非日常のティータイム。真っ白な雪の世界に、あたたかな時間が流れる。
その体験を、工藤さん自身も「まさに至福のときだった」と語ります。
「雪を使った遊びっていろいろあるんですよ」と言う工藤さんは、「雪の家」といわれるイグルーをつくったこともあるそう。
「ふわふわした雪を踏んで固めて、固めたものをスノーソーっていう雪用のノコでブロック状に切り出すんです。そのブロックを段ごとにずらしながら重ねてつくります。中に入るとけっこうあったかいんですよ」
こうして遊びを提供してきた工藤さん。ニセコを訪れる人たちに楽しんでもらおうという気持ちがいちばんにありつつも、自身もいっしょに楽しんでいたと言います。

まちで暮らす人に会うことも、ひとつの遊びになりうる。
「ペンションのときのお客さんが、いまでも会いに来てくれるんです。『山行こう』って言われると、『僕もう年だから勘弁してよ』って言ったりするんですけど(笑)」
遊びを介してペンションのお客さんたちと交流してきた工藤さん。お話を聞いていると、その遊びにも魅力がありますが、工藤さんという“人”の魅力に惹かれるお客さんが多いのだと感じます。
「観光って、人の交流作業なんじゃないかと思うんですよね。そう思うと、そこに住んでいる人に会うっていうのも、ひとつの遊びかもしれないですね」
そう教えてくれる工藤さんも、以前お話を伺った渡辺さんも、“人”にリピーターがついている。会いたい人がいると、そのまちをもっと好きになるのだと思います。
上辺だけをなぞって観光するのではなく、人と交流してみる。そして「また会いたい」と思う人に出会えたら、今度はその人に会うことを楽しみに、またニセコを訪れる。
そういう楽しみ方もおおいにアリだと知った編集部は、ニセコでの遊びに幅の広さ、懐の深さを感じるのでした。
▼【レジェンドに訊くニセコ】工藤達人さん 全3回はこちら
vol.1 ポテト共和国篇
vol.2 フットパス篇
vol.3 遊び篇(本記事)





