ここではいままでどんなことがあったのだろう。ニセコのことをもっと深く知りたい。
そんな思いから、サイコーニセコ編集部は、ニセコで文化を築いてきたレジェンドたちを訪ねることに。
前回に引き続き登場するのは、ニセコのペンション文化を盛り上げた工藤達人さん。みなさんは、1980年代にニセコのペンション街で”建国”された「ポテト共和国」というミニ”独立国”を知っていますか?工藤さんは、その初代”大統領”に就任したレジェンドです。
ニセコのみならず後志のPRにも尽力したり、ニセコフットパス協会を立ちあげたり、多岐にわたって活動されている工藤さんに、さまざまなお話を伺ってきました!
第2回となる今回は、工藤さんがフットパスをはじめた理由やフットパスの楽しみ方についてお届けします。

フットパスは“歩く旅”。ありのままの自然や動物に出合える。
まず、みなさんは「フットパス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。日本フットパス協会によると、フットパスとはイギリス発祥の“歩く旅”です。
「歩くスピードっていろんなものが見える。自然ってふしぎなもので、見ようとする人にはありのままの姿を見せてくれるんです。ところが、見ようとしないと何も見えない。見過ごしちゃうんです」
歩くというスローなペースだから出合える景色があるのだと、工藤さんは教えてくれます。「自転車もいいんだけど、やっぱり歩くのがいちばんいい」とのこと。
「フットパスに参加する人には『あっちこっち見ながら歩くといろんなものが見えてくるよ』って絶えず言っています。そうすると動物がひょっこり顔を出していたりするわけですよ」
動物たちに遭遇するとき、人が動物を見つけるのより先に、動物が人を見つけている感覚があると工藤さんは言います。
「たとえば冬にうさぎを見つけるときなんか、視線を感じてふっと見たらそこにいるんですよ。先に向こうに見つけられている。そういうおもしろさもありますね」
「野鳥が手にとまってきた」という経験もある工藤さん、フットパスの道中でモモンガやエゾクロテンの姿を見かけたこともあるそうです。
自ら歩いて体感。フットパスなら、まちの魅力を深く味わえる。
ニセコにフットパス協会ができたのは2000年代のこと。協会を立ちあげる前に、工藤さんはニセコ町内全域を自らの足で歩いてみたのだそう。
「僕はよそから住んでもう40年以上になるけど、いまでも素敵だなと思う景色がたくさんあるんですよ。フットパスをはじめた理由には、そういう魅力をもっと掘り下げたいっていうのがありました」
ドライブで観光地をめぐるのも楽しいですが、少々薄味で終わってしまうことがなきにしもあらず。ニセコを訪れる人たちの様子を観察していた工藤さんは、歩くことでもっと深いところにある魅力を伝えられるのではないかと考えたようです。
「自分で町をくまなく歩いたら、羊蹄山も見る方向によって全然違うなあとか、いろいろわかるんですよ。自分はここから見るのが好きだなっていう場所を発見したりね」
車だと通り過ぎてしまう景色の中には、種類豊富な植物も存在しています。よく知られるカタクリの花だけでなく、オオバキスミレといった希少な植物を発見できることも。
歩いてみると、景色の解像度が変わる。それを体感した工藤さんは、フットパスを通してニセコの魅力を深掘りできると確信し、コースを考えはじめます。

工夫を凝らしたコースに、ニセコならではの体験を散りばめる。
ニセコフットパス協会を立ちあげた工藤さんは、コースづくりを本格化。ニセコのフットパスコースはすべて工藤さんが考えているそうです。
豊かな自然にあふれるニセコは、開拓の歴史もあり、文学にも縁のある場所。そんなまちの薫りを感じられるフットパスコースがあるのです。
ニセコリゾート観光協会が発行するフットパスコースマップでは、「開拓・歴史を想う道」「文学・歴史の散歩道」「市街地ショートコース」の3コースが紹介されています。
また、「全国フットパスの集い2025 inニセコ」では、「晩秋の神仙沼コース」「錦秋の尻別川ウォーク」「紅葉散策」などバラエティ豊かなコースが展開されました。

2025年10月に2日間開催された「全国フットパスの集い2025 inニセコ」
工藤さんが考えるニセコのフットパスコースは、長めに設けられているのが特徴。その中で、ニセコならではの体験ができるように工夫していると言います。
「他ではやっていないようなことを取り入れたいんです。川筋を歩いてカヌーに乗ったり、鮭の遡上を見たり、そういうことを取り入れたコースも考えました」
それが、先述の「錦秋の尻別川ウォーク」というコース。カヌーを使って水の中も歩くように楽しむことができる、贅沢なコースを実現しました。
過去には有島記念館の庭で参加者にビールと茹でたとうもろこしを配ったこともあり、「せっかく田舎に来るなら農産物を食べたいじゃないですか」と工藤さんが言うように、ビールよりとうもろこしが人気だったとか。
「参加する人たちからは『変化に富んでいておもしろい』って言ってもらえることも多いです。『こんなところもあったのか〜』っていう声が聞けるとうれしいですね」
雪解けには水辺に花が咲いたり、鳥の声が聞こえたりするという有島エリアの川沿いを歩くコースは、発祥の地であるイギリスから来たフットパス関係者に「いいコースだね」と言われたことも。
また、工藤さんは、そうすることで魅力が増すスポットではもちろん解説しますが、“説明”ばかりにならないように、参加者が自分の目で魅力を見つけることも大切にしています。
そこには、参加者が自分のペースで歩けるように、という思いも。それぞれが心地よいペースで歩いてこそ、自分だけのお気に入りの景色を見つけることができるのかもしれませんね。

短い距離でもOK。歩くことで見つけられる風景がある。
毎日7km歩いている(!)工藤さんは、いまだ新鮮に「きれいだな」と感じる風景に出合うことがあるそう。
みなさんもニセコを訪れるときには、少しの間だけでも車から離れて過ごしてみてはいかがでしょうか。
既存のフットパスコースを参考に歩いてみたり、心の赴く方向へ導かれるままに歩いてみたり。ちょっと歩いてみるだけで、いつもとは違ったニセコの表情を見つけられるはずです。
「たとえばニセコ駅の狩太踏切を超えて、右に行けば有島、左に行けば芙蓉橋。そういう短い距離でも、歩くと景色が違って見えます。芙蓉橋のほうは、橋を渡ってから峠を歩いてニセコ大橋まで行けば、なかなかのビューポイントですよ」
と、工藤さんが教えてくれるように、歩き慣れていない人は短めの距離からはじめてみるのがおすすめです。
フットパス協会が行うフットパスに参加するのも◎。「協会」と聞くと、会員じゃないと参加できないのかなと思うかもしれませんが、「誰でもウエルカムですよ」と工藤さん。
フットパスを開催するときはHPでお知らせ予定とのことなので、気になる人はHPをチェックしてみてくださいね。
▼ニセコフットパス協会の詳細はこちら
▼【レジェンドに訊くニセコ】工藤達人さん 全3回はこちら
vol.1 ポテト共和国篇
vol.2 フットパス篇(本記事)
vol.3 遊び篇





