あのお店に“行きたい”というより、あのお店に“帰りたい”。そんなレストランに出会った。
私が友人にすすめられて向かったのは〈カムイの実〉というレストラン。札幌に住む私は休日のドライブでよくニセコを訪れるのだけど、実はすすめてもらうまで知らなかったお店。初めてのお店に行くのはいつだってちょっぴり緊張する。
マップをたよりにお店を目指していると、道の駅ニセコビュープラザからほどなくして「カムイの実 300m奥」の看板を発見。看板に従って細い砂利道を進むと、クリーム色の一軒家が見えてくる。それが〈カムイの実〉だった。

扉を開くと、お店を営むご夫妻が笑顔で迎えてくれてホッとする。奥さんが朗らかに声をかけてくれるから、初めてのお店という緊張がゆるゆるとほどけてゆく。初めてなのに、なぜだろう。あったかい空気に包まれていて、なんだか“帰ってきた”感じがする。
目の前に豊かな景色が広がるカウンター席に案内してもらう。そう、ここでいうカウンター席は、調理場に向かったカウンターではなく、窓に向かったカウンターなのだ。晴れていれば羊蹄山を望む、その景色もごちそうになるロケーション。

メニューは洋食が揃っていて、ハンバーグやナポリタン、日替わりランチに目移りしつつ、私はビーフシチューを注文することに。奥さんによると、ビーフシチューはオープン当初のメニューにはなく、お客さんの希望でいつしか定番メニューになったものだとか。
ビーフシチューを心待ちに、窓の外を眺める。風に吹かれる花々やかすかに顔を出す羊蹄山を眺めながら、ときどき奥さんとお話しながら、ぼーっと過ごす。日々あれこれと忙しなく考えてしまう私も、ここでは穏やかでいられた。ああ、これこそ贅沢なひととき。
ぼーっと過ごしているうち、ビーフシチューがやってくる。よく煮込まれた濃厚なシチューに、とろけるように柔らかいお肉がたくさん。彩りを添える野菜たちもおいしく、特に揚げたじゃがいも「インカのめざめ」は外のカリカリ感、中のホクホク感が絶妙だった。

居心地のよさにもっとここで過ごしたくなった私は、スイーツも満喫しようとアップルパイを注文。奥さんとお話するのも楽しく、いろいろと訊いていると、〈カムイの実〉をオープンする前はニセコアンヌプリのほうでペンションを経営されていたとのこと。

それを知った私は、なるほど、と小さく頷く。お店に入ったときに“帰ってきた”感じがしたのは、ペンションでゲストを迎えていたおふたりから滲み出るあったかさによるものだったのだなあ、としみじみ思う。

お店を出るときには、私はもう〈カムイの実〉を大好きになっていた。おふたりには「またきます」と言ったけれど、私の中では「またきます」より「また“帰って”きます」のほうが自然な気がした。
もうすぐ雪が降るだろう。奥さんが「私はここから見る冬の景色がいちばん好きなの」と教えてくれたことを憶えている。今度の冬にニセコを訪れるときは、〈カムイの実〉から真っ白の羊蹄山を眺めよう。
カムイの実
所在地 ニセコ町元町60-28 [google map]
営業時間 11時00分~14時30分
定休日 不定休(行く前に要電話)※2025/12/26~2026/2/28まで冬季休業
電話番号 09062110133





