移住者が多いニセコエリア。ニセコを拠点に数々のアクティビティを展開する、北海道ライオンアドベンチャーの代表取締役 下田伸一さんもその一人。ニセコリゾート観光協会の代表取締役も務め、まちづくりの活動にも携わる下田さんに、ニセコでの暮らしや観光についてお伺いしました。
多彩な人々が集うニセコ 篇
町の趣と豊かな景色に惹かれて 篇
教科書にない生き方が見つかる 篇(本記事)
移住者の中には、ここでの子育てを望む人たちも。教育移住が多い町。
─豊かな自然と触れ合えるニセコの環境は、子どもたちにもいい影響がありそうだと感じますが、子育てや教育の面ではどうでしょうか?
下田:こういう環境で自分の子どもを育てたいっていう人は多くて、データでもニセコ町は2021年に教育移住※北海道1位を記録しています。2011年から10年で11%も子どもが増えているんです。
※より良い教育環境を求めてほかの地域に移住すること。

春夏秋冬で異なる表情に魅力があるニセコ。ライオンアドベンチャーのアクティビティでも自然の豊かさを感じられる
─子どもたちが都市部よりものびのびしているような気がします。
下田:生意気なくらいのびのびしていますよね(笑)。環境で育ち方も変わるというか、僕もニセコで子どもを育てるのはいいなと思います。
─下田さんに見せていただいたホームビデオやプライベート写真の中に、息子さんが家の前でサックスを吹いているものがありましたが、それができるのもこの環境ならではっていう感じがしました。
下田:都市部だと中学校に入学したら吹奏楽部に入るとか、有名な音楽教室に通うとか、なんとなく楽器を始めるレールが決まっていますよね。でも、ここにはそのレールがないので、うちの子がサックスをやりたいって言ったときには別の方法を探したんですね。
それで、警察に楽器をできる人がいたので、その人のところに行って楽器を触らせてもらって。それから一人で家の前で吹いたりして。うちの子、いっぱいの中のパートは嫌だって、一人で好きにやりたいって言っていて。家の前でサックス吹くなんて、都市部ではできないですよね。
教室に通わないと発表の場がないですけど、それも農家さんが「バーベキューやるよ」って誘ってくれたときにお披露目させてもらったりして解決できて。こういうことができるのも、この環境だからっていうのはあると思いますね。
教科書に載っていない生き方をする大人と出会い、将来の選択肢を広げる。
─今のお話を聞いていても、いろんな大人たちとの出会いがあって、ニセコの子どもたちは学校で教わるのとは違うものを学べる機会が多いんじゃないかなと思います。
下田:僕なんかもそうだけど、よそから来た人たちの話を聞けることも、子どもたちにはわりと刺激になっているんですよね。教員採用試験に落ちたって話しましたけど、それもあって僕はやりたいことをやって生きてきて。田舎にいながら、いろんな経験した人の話を聞くのって面白いみたいです。
どうしても、いい大学に入って、いい企業に入って、っていうのがよしとされがちじゃないですか。僕もそういう教育を受けてきたし、そういう人生もありだと思うんですけど、これまでそういう人生だった人がそのレールから降りてニセコに移住しているパターンもあるわけで。
そうやってニセコに来た人たちの話を聞くと、子どもたちの中には「私もそっち(いい大学、いい企業に入るコースではない)かもしれないな」って思う子もいたりするんですね。だから、いろんな大人の話を聞けることで、将来の選択肢が増えるんじゃないかなと思います。
─移住してくる人たちにもそれぞれ背景があるから、いろんな生き方を知ることで、子どもたちも視野が広がりそうですね。
下田:教科書に載っていない生き方を知れるというか。僕の生き方も、そういう教科書があるなら、載っていないものだと思いますし。子どもたちにも自分のやりたいことを見つけてほしいですね。進学とか就職はそれを叶えるための手段の一つでしかないので。

ニセコに移住して20年以上が経つ下田さんは、今ではまちづくりを牽引する一人に。2025年はトゥクトゥクのレンタルを始めたり、有島記念館の敷地内にこんなフォトスポットを設置したり
国内留学に国内ワーホリ、高校進学でニセコにやってくるパターンも。
─親と一緒に移住してくる子どもたちだけでなく、若い世代が自らニセコに来ることも多い印象があります。
下田:5000人の町にインターナショナルスクールが2校あったり、大学生のニセコ留学がこれまで8回開催されていたりするのも特徴ですし、ちょっと上の年齢だと国内ワーホリっていう形でニセコに来る人がいます。
─ニセコ高校も町外から入学する生徒が一定数いて、閉鎖や合併をする学校がある中で定員を増やすんですよね?
下田:定員が40人から70人に増えますね。定員を増やすぐらい生徒が集まるって、その現象自体がコンテンツになるような価値がある、すごいことなんですよ。
道外の学校とか台湾の大学との包括連携協定があって、生徒の行き来もあるんです。最近では、札幌の藻岩高校の生徒とニセコ高校の生徒が交流する機会もありました。
─高校進学だと概ね15歳で、その年齢で町外からニセコに来ることを決断するのは、大人たちの移住とはまた少し違いますよね。ニセコ高校の生徒さんにも今度お話を聞いてみたいと思っています。
下田:アウェイなところに来るような感じですもんね。これまで話していた、人生のレールみたいなものをまだ感じていないような年齢で、どうしてニセコに来たのか聞いてみたいですよね。
大切なのは、やっぱり人。未来の担い手は、この町を好きな人であってほしい。
─ニセコ高校には起業家を育てるユニークなプログラムもあるみたいですが、そうやって学ぶこともできて、探せば近くに起業した大人もいるだろうし、いい環境ですよね。
下田:移住して起業した人に「なんでここで商売しているんですか?」って聞いたりもできますよね。僕もアウトドアは好きだったけど、仕事にするなんて思っていなかったし、人によっていろんなストーリーが聞けると思います。
さっき教科書に載っていないってたとえましたけど、前例がないことをするのって、どこを進んでもいい分、どうやって進めばいいかが難しいじゃないですか。そういう話をいろんな人から聞いてみるのも良さそうですよね。
現実的な話でも、社長をしていると、従業員の給料とかキャッシュフローを考えますよね。サラリーマンだったら、それを学びとして理解はできても、体験してみないと実感は得られないと思うんですよね。
─起業や事業経営の大変なところも含めて、いろんな面からの話が聞けそうですね。
下田:今日は地域おこし協力隊の方々にお話をさせていただきました※けど、協力隊でニセコに来る人の中にも起業したいって人はけっこういるんですよ。
※この日は地域おこし協力隊の方々に向けた下田さんの講演があり、編集部も参加させていただいた。
がつんと稼ぎたいなら都市部か、いや、でも、ワークライフバランスが…とか、起業したい人はいろいろ考えると思うんですけど、ニセコにも稼げるチャンスはちゃんとあると思います。そのチャンスを、アイデアと行動力で掴むというか。
でも、やっぱり結局は人との助け合いですね。コロナ禍でライオンアドベンチャーの仕事がないとき、農作業を手伝わせていただいたんですけど、そういうことができたのも地元の農家の方とのつながりがあったからですし。
一人では生きていけないから、支えてくれる人がいないと無理で。僕もスタッフがいてくれるから、続けられています。

ライオンアドベンチャーでは多様なスタッフが活躍中
─「ニセコは人ありき」というお話もありましたが、本当にそうですね。ニセコで育つ人たちが将来どんなふうに活躍するのかも楽しみです。
下田:教育って、小さな子どもたちに向けてのものはもちろん、キャリアデザインの話をしたり、人材育成の面も大切だと思うんです。ライオンアドベンチャーでも、事業を通じて地域で活躍できる人材を育てたいと思っていて、中学生・高校生の職場体験を受け付けたりしています。
それから、ニセコ高校の子たちが卒業して町を出たとしても、戻ってきてくれるような体制もつくりたいですね。中で見ているのと、外で見ているのとでは違うことがあるから、ニセコを出てみてニセコの良さがわかる、っていうこともあると思いますしね。
そういう“人づくり”をしていきたいですし、未来のニセコを担うのはこの町を好きな人であってほしいなと思います。
ライオンアドベンチャーのアクティビティも。要チェック
北海道ライオンアドベンチャー
所在地 ニセコ町中央通60の4
営業時間 2026年3月31日(火)までは9:00〜17:00 ※季節により営業時間が変わります。2026年4月1日(水)以降の営業時間はHPをご確認ください。 ※営業時間はニセコベース(受付事務所)のオープン時間です。各アクティビティの実施時間は異なりますので、別途ご確認ください。
定休日 無休
電話番号 0136-43-2882
ニセコリゾート観光協会
電話番号 0136-44-2468
■JRニセコ駅観光案内所
所在地 ニセコ町中央通142の1
営業時間 9:00〜18:00 ※不在時あり
定休日 無休
電話番号 0136-44-2468
■道の駅ニセコビュープラザ観光案内所
所在地 ニセコ町元町77の10
営業時間 9:00〜18:00
定休日 無休





